現代ヒップホップシーンを代表するアーティストの一人、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)。彼の音楽は、複雑な比喩や隠喩(たとえ)を用いて人生の経験や社会問題を表現するスタイルが特徴で、多くのファンを魅了しています。
2015年にリリースされたKendrick Lamarのアルバム「To Pimp a Butterfly」。このアルバムに収録されている「King Kunta」は、彼の代表曲の一つであり、今日でも多くの人々を魅了し続けています。
ファンクミュージックを取り入れたアップテンポなトラックに、Kendrick Lamarの卓越したラップスキルが光る本楽曲。歌詞には、アフリカ系アメリカ人の歴史や文化、そして彼自身の成功と葛藤が織り交ぜられています。
特に、「King Kunta」というタイトルは、18世紀の奴隷、Kunta Kinteに由来しており、抑圧された人々が自由を求める姿を象徴しています。この曲は、単なるヒップホップの枠を超え、社会的なメッセージを力強く伝える作品として高く評価されています。
本記事では、「King Kunta」の歌詞に込められた意味や、楽曲の背景、さらにはミュージックビデオの魅力まで、その奥深い世界を徹底的に解説していきます。
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ケンドリックラマー/Kendrick Lamarのディスコグラフィーについて

「King Kunta」以外にも、ケンドリック・ラマーは数多くの曲をリリースしています。ここでは、代表的なシングルを年代順に紹介します。
- 2011年: – HiiiPoWeR
- 2012年: – The Recipe
- 2012年: – Swimming Pools (Drank)
- 2013年: – Bitch, Don’t Kill My Vibe
- 2013年: – Poetic Justice (feat. Drake)
- 2013年: – Backseat Freestyle
- 2015年: – i
- 2015年: -The Blacker the Berry
- 2015年: -King Kunta ←今回の記事
- 2015年: -Alright ←「Alright」の解説記事はコチラ
- 2016年: – untitled 02 | 06.23.2014.
- 2017年: – HUMBLE ←「HUMBLE」の解説記事はコチラ
- 2017年: – DNA ←「DNA.」の解説記事はコチラ
- 2017年: – LOYALTY (feat. Rihanna)
- 2017年: – LOVE (feat. Zacari)
- 2018年: – All the Stars
- 2018年: – King’s Dead (with Jay Rock, Future & James Blake)
- 2020年: – The Bigger Picture
- 2021年: – Family Ties
- 2021年: – Range Brothers
- 2022年: – The Heart Part 5
- 2022年: – N95
「King Kunta」のリリース日、チャートランキング、受賞歴について
Kendrick Lamarの「King Kunta」は、2015年3月15日にリリースされたアルバム『To Pimp a Butterfly』の収録曲として登場しました。この楽曲は、リリース直後からその斬新なサウンドと社会的メッセージで注目を集め、アルバムのプロモーションシングルとしても重要な役割を果たしました。「King Kunta」はアメリカのBillboard Hot 100で最高58位を記録し、さらにR&B/Hip-Hopソングチャートや海外各国のチャートでも存在感を示しました。特にイギリスではUK Singles Chartで56位を記録し、グローバルな評価を獲得し、2015年のUK Festival Awardsで「Anthem of the Summer」を受賞するなど、多くの音楽賞を受賞しました。批評家からも絶賛され、Rolling Stone誌の「歴代最高の曲500選」では395位にランクインしています。
受賞歴においても『To Pimp a Butterfly』の成功とともに「King Kunta」は広く評価されました。アルバム全体がグラミー賞で「最優秀ラップアルバム」を含む多くの部門で受賞・ノミネートされる中、この曲もアルバムを象徴する楽曲の一つとして高く評価されました。また、楽曲に対する批評家からの賞賛は「歴史的文脈を反映したリリック」と「斬新なファンクサウンド」に集中し、音楽メディアやリスナーから高い支持を集めています。「King Kunta」は、チャートや受賞歴の面でKendrick Lamarのキャリアを語る上で欠かせない存在となりました。
<To Pimp a Butterflyに収録されている曲>
- Wesley’s Theory
- For Free? (Interlude)
- King Kunta
- Institutionalized
- These Walls
- u
- Alright
- For Sale? (Interlude)
- Momma
- Hood Politics
- How Much a Dollar Cost
- Complexion (A Zulu Love)
- The Blacker the Berry
- You Ain’t Gotta Lie (Momma Said)
- i
- Mortal Man
「King Kunta」の歌詞の意味やメッセージとは?

Kendrick Lamarの「King Kunta」は、力強いメッセージ性を持つ楽曲で、アフリカ系アメリカ人の歴史や社会的抑圧、そしてその中で力を取り戻すことへの誇りと意志を描いています。タイトルの「Kunta」は、奴隷制度を描いた小説『ルーツ』に登場する主人公クンタ・キンテに由来し、自由を奪われた人々の象徴として使われています。この楽曲では、奴隷制度時代から現代に至るまで、黒人コミュニティが直面してきた困難や抑圧に対する抵抗を表現しています。
歌詞では、成功を収めた後も批判や妬みを受ける状況を指摘し、自身の力を誇示する一方で、その背景にある権力構造への挑戦を描いています。特に「Bitch, where were you when I was walking?」というフレーズは、苦しい状況に置かれていた時の孤独と、成功後に人々が群がる現実を鋭く批判しています。また、「I got a bone to pick」という冒頭の一節からは、Kendrick自身が現代社会における偽善や不平等への怒りを込めていることが伺えます。
さらに、この楽曲はファンクをベースにしたサウンドとともに、黒人文化の誇りを讃える内容となっており、「自分の力を取り戻し、抑圧に負けない」という強いメッセージを発信しています。「King Kunta」は、音楽を通じて社会的意識を高めると同時に、リスナーに自己のアイデンティティと自由を再認識させる楽曲として広く支持されています。
[Intro: Kendrick Lamar]
I got a bone to pick
I don’t want you monkey-mouth motherfuckers
Sittin’ in my throne again
Ayy, ayy, nigga, what’s happenin’?
K-Dot back in the hood, nigga!
I’m mad (He mad!), but I ain’t stressin’
True friends, one question[Chorus: Kendrick Lamar]
Bitch, where you when I was walkin’?
Now I run the game, got the whole world talkin’
King Kunta, everybody wanna cut the legs off him
Kunta, black man taking no losses, oh yeah
Bitch, where you when I was walkin’?
Now I run the game, got the whole world talkin’
King Kunta, everybody wanna cut the legs off him
When you got the yams—(What’s the yams?)[Verse 1: Kendrick Lamar]
The yam is the power that be
You can smell it when I’m walkin’ down the street
(Oh yes, we can, oh yes, we can)
I can dig rappin’, but a rapper with a ghostwriter?
What the fuck happened? (Oh no!)
I swore I wouldn’t tell, but most of y’all sharing bars
Like you got the bottom bunk in a two-man cell (A two-man cell)
Something’s in the water (Something’s in the water)
And if I gotta brown-nose for some gold
Then I’d rather be a bum than a motherfuckin’ baller (Oh yeah!)[Chorus: Kendrick Lamar]
Bitch, where you when I was walkin’?
Now I run the game, got the whole world talkin’
King Kunta, everybody wanna cut the legs off him
King Kunta, black man taking no losses, oh yeah
Bitch, where you when I was walkin’?
Now I run the game, got the whole world talkin’
King Kunta, everybody wanna cut the legs off him
When you got the yams—(What’s the yams?)[Verse 2: Kendrick Lamar]
The yam brought it out of Richard Pryor
Manipulated Bill Clinton with desires
Twenty-four-seven, three-sixty-five days times two
I was contemplatin’ gettin’ off stage
Just to go back to the hood, see my enemy, and say… (Oh yeah)[Chorus: Kendrick Lamar]
Genius
Bitch, where you when I was walkin’?
Now I run the game, got the whole world talkin’
King Kunta, everybody wanna cut the legs off him
Kunta, black man taking no losses, oh yeah
Bitch, where you when I was walkin’?
Now I run the game, got the whole world talkin’
King Kunta, everybody wanna cut the legs off him
スラングについて
“I got a bone to pick”
意味:「文句がある」「話がある」「不満がある」
解説:「bone to pick」は英語の慣用句で、誰かに対して言いたいことや不満があるときに使われます。ここでは、Kendrickが何かに対して怒りを抱えていることを示唆しています。
“Monkey-mouth motherfuckers”
意味:「くだらない奴ら」「うるさい奴ら」
解説:「monkey-mouth」はスラングで「うるさくしゃべる人」「バカみたいに話す人」という意味です。「motherfuckers」は強い侮辱表現で、「クソ野郎」「最低な奴」という意味を持ちます。ここでは、Kendrickが自分の王座(throne)を狙う者たちを見下していることが分かります。
“Back in the hood”
意味:「地元に戻った」
解説:「hood」は「neighborhood(近所)」の略で、スラングとして「貧困地域」や「黒人コミュニティ」を指すことが多いです。Kendrickはここで、地元コンプトンに戻ったことを示しています。
“K-Dot”
意味:「Kendrick Lamarの過去のステージネーム」
解説:「K-Dot」はKendrick Lamarがキャリア初期に使用していたアーティスト名で、彼自身を指す言葉です。彼は後に本名で活動するようになりましたが、この名前は今でもファンの間で親しまれています。楽曲内で「K-Dot」と言うことで、彼が地元の仲間や過去の自分を意識していることが伺えます。
“I’m mad (He mad!), but I ain’t stressin'”
意味:「怒ってる(彼、怒ってるぜ!)でも気にしてない」
解説:「ain’t stressin’」は「ストレスを感じていない」「気にしていない」という意味のスラング。「mad」はここでは「怒っている」だけでなく、「情熱的」や「興奮している」という意味も持っています。
“Run the game”
意味:「業界を支配する」「トップに立つ」
解説:「run the game」は、特定の分野(特に音楽業界やストリート)で成功し、支配的な立場にいることを意味します。Kendrickは「今は俺がヒップホップシーンを支配している」と主張しています。
“Cut the legs off”
意味:「成功を妨害する」「引きずり下ろす」
解説:「cut the legs off」は比喩表現で、誰かの力や成功を奪うことを意味します。Kendrickは、成功したことで多くの人が彼を妨害しようとしていることを示唆しています。
“The yams”
意味:「成功」「権力」「富」
解説:「yam(ヤム芋)」はスラングで、「お金」「成功」「権力」などを象徴する言葉として使われます。曲中の「The yam is the power that be」は、「ヤム(成功)は支配する力だ」という意味になります。
“I can dig (something)”
意味:「理解する」「共感する」「好きになる」
解説:「dig」はスラングで、「理解する」「共感する」「気に入る」という意味があります。ここでは「I can dig rappin’(俺はラップを理解してるし、楽しめる)」といった意味で使われています。
“I can dig (something)”
意味:「理解する」「共感する」「好きになる」
解説:「dig」はスラングで、「理解する」「共感する」「気に入る」という意味があります。ここでは「I can dig rappin’(俺はラップを理解してるし、楽しめる)」といった意味で使われています。
SNSの反応は?
Kendrick Lamarの「King Kunta」はリリース直後からファンやリスナーの間で大きな話題となり、SNSでは熱狂的な反応が寄せられました。特にTwitter(現X)やInstagramでは、この楽曲の大胆でエネルギッシュなファンクサウンドと鋭いリリックに対する称賛が溢れ、「#KingKunta」というハッシュタグがトレンド入りするほどの注目を集めました。多くのファンが「King Kunta」を現代社会の権力構造や人種的不平等に対する挑戦として捉え、Kendrick Lamarの社会的メッセージの深さを絶賛する投稿を行っています。
また、「King Kunta」の力強い歌詞やタイトルに込められた歴史的背景についても、多くのリスナーが考察を共有し、特に黒人コミュニティの誇りを称賛する声が目立ちました。「この曲は単なる音楽ではなく、時代を象徴するアンセムだ」といったコメントや、「Kunta Kinteの名前を通じて過去と現在を繋げている点が天才的だ」という意見も見られます。
さらに、この楽曲の象徴的なミュージックビデオについても話題が集中。Kendrick Lamarの「King Kunta」のミュージックビデオ(MV)は、2015年4月2日に公開され、彼の故郷であるカリフォルニア州コンプトンを舞台に撮影されました。このMVの監督を務めたのは、ディレクターXとして知られるジュリアン・ルッツです。このMVは、楽曲のテーマと同じく、黒人文化の誇りやコミュニティの団結を表現しており、シンプルながらも強いメッセージ性を持った映像が特徴です。
映像では、Kendrick Lamarがコンプトンの街を歩きながらラップし、地元の人々と交流する様子が映し出されます。特に、車の屋根の上に立ってパフォーマンスするシーンや、仲間たちと共にダンスする場面は、楽曲の持つファンクのグルーヴ感を視覚的に強調しています。また、カットの切り替えが速く、ストリートのリアルな雰囲気を捉えた映像スタイルが特徴的です。
さらに、MVは意図的にローファイ(低画質)なフィルム風の質感を持たせており、クラシックなヒップホップビデオの雰囲気を再現しています。これは、P-Funkやウェストコースト・ヒップホップの黄金時代へのオマージュとも解釈できます。
リリース後、このMVはSNSやYouTubeで大きな話題となり、ファンや批評家から「コンプトンのストーリーをリアルに映し出した映像」として高く評価されました。「King Kunta」のMVは、Kendrick Lamarが自身のルーツを大切にしながら、ヒップホップの歴史と未来をつなぐ存在であることを象徴する作品となっています。
以上、ケンドリック・ラマーの『King Kunta』を、歌詞に込められたメッセージや音楽的な側面から解説しました。
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