【IBEX TOKYO:インタビュー前編】東京で最先端のNYバイブスを感じられる唯一のクラブ・六本木「IBEX TOKYO」を沸かすDJたち

六本木交差点から徒歩1分。決して大箱とは言えないが、日本でも本場ニューヨークのバイブスを感じさせるクラブがあるのをご存知だろうか。「ROPPONGI IBEX TOKYO(以下、IBEX TOKYO)」のフロアは、ジャパナイズされていない、海外のグルーヴに包まれ、ここでプレイするDJと、それを目当てに集まるリスナーたちが生み出す雰囲気は、連日耳の肥えたヘッズたちを虜にしている。

「IBEX TOKYO」のグルーヴはどのようにして生まれ、水曜から土曜まで開催されているレギュラーイベントではどんなパーティが行われているのか。各イベントのDJ陣を紹介しながら「IBEX TOKYO」を深掘りしていこう。

目次

海外のグルーヴが生まれる「IBEX TOKYO」

オーナー・ロマーノとレジデントDJ IVER

「IBEX TOKYO」がオープンしたのは2003年11月。1999年に閉店した六本木「GASPANIC」の上階に、それまで六本木のミュージックバーでバーテンをしていたオーナーのロマーノさんが独立開業した。

エチオピアとイタリアにルーツをもつロマーノさんは、HIPHOP、レゲエ、R&B、ダンスホールなど自身が好きなジャンルに特化したバーを開くのは夢だった。開業当時の2000年代、あまり元気のなかったHIP HOPをもう一度元気づけたいという思いもあったそう。

「『IBEX』という名前には、エチオピアにルーツがあります。『アイベックス』とは一度は絶滅しかけた高地ヤギのことで、エチオピアでは『ワリア』と呼ばれています。多くのエチオピア人が『アイベックス』を店名に掲げていたり、エチオピアでは象徴的なアイコンです」(ロマーノ)

IBEX TOKYOのオーナー・ロマーノさん

そう語るロマーノさんは来日28年目。その後、2016年の改正風営適正化法による特例許可(特定遊興飲食店営業許可)申請を機に、「IBEX TOKYO」は2018年に現在の場所へと移転した。

そして、当時長野県から上京し「IBEX TOKYO」に遊びに来ていたのが、現在レジデントDJを務めるDJ IVER(アイバー)だ。上京して初めて入った東京のクラブが「IBEX TOKYO」。叔母がソウルシンガーだったことから10代からブラックミュージックに傾倒し、六本木のシーンに染まっていくなかでいちヘッズからDJへの道を志した。

IBEX TOKYOのレジデントDJを務めるDJ IVER(アイバー)

「DJを始めたのは2012年あたりですね。当時千葉に住んでいたので、そのときは千葉でイベントを主催したりしていましたが、六本木にも通い続けていました。そして、先輩DJの引き合いもあって、30歳のときに当時から気にかけてもらっていたロマーノに声をかけてもらいレジデントDJを務めることになりました」(DJ IVER)

「IBEX TOKYO」を揺らす“世界の音楽”

IBEX TOKYOでは連日海外からのお客さんで溢れかえっている(画像:Instagramより)

六本木でナイトライフを楽しむ人の多くは海外のクラブで遊んできたインバウンドたち。リリックやその曲の背景にも聞き耳を立てている。ただ盛り上げるだけの選曲では通用せず、ときにはDJのプレイにブーイングが起こることも。そのぶん、レジデントを務めるDJ IVERもDJのプレイに対してはシビアだ。

「時間帯や客層に合わせた選曲や曲の雰囲気はもちろんですが、リリックやメッセージ、アーティストのエリアなど、『IBEX TOKYO』では日本人リスナーを相手にするよりシビアな雰囲気があります。そのぶん盛り上がりもすごいです。ピークタイムの4、5時を過ぎても、遅いときは朝9時までパーティしていることもあります」(DJ IVER)

水曜から土曜のレギュラーイベントに名を連ねるDJ陣は、ニューヨークでレギュラーをもっていたDJから、若手注目株のホープまでさまざまだ。

とくにメインDJたちは、新譜・旧譜、国籍問わずフロアを沸かせられる面々。DJ IVER自身も毎回教わることが多いという。耳の肥えたインバウンド客からは「あのDJはなんて名前だ」「次はいつ回すんだ」と聞かれることも。レジデントとしてDJ IVERが心がけているのは、インバウンドに対してもロックできること。とくに若手DJには、曲の背景まで理解したうえでプレイするようダメ出しすることも。

「ベテラン勢がインバンドを沸かす姿を見て、若手にもどんどんと育ってほしいですね。渋谷や新宿でレギュラーを持っているDJや、地方で活躍しているDJにとっても、『IBEX TOKYO』は特別の場所と言われています」(DJ IVER)

「DJ IVERのDMや、店にも『IBEX TOKYOで回したい』という連絡が来ます。東京・六本木と言っても、うちはかなりオリジナルなグルーヴだと思うので、なかなかすぐにOKは出していません」(ロマーノ)

HIPHOPだけでなく、レゲエもR&Bもダンスホールもアフロも、そしてクラシックから最先端まで。「IBEX TOKYO」は、“世界の音楽”を一晩中楽しみたい人、そして海外のグルーヴを感じたい人が集う、東京では数少ないクラブと言っていいだろう。

リスナーをロックする「IBEX TOKYO」レギュラーイベントとDJたち

「IBEX TOKYO」では、水曜から土曜までの4日間レギュラーイベントを開催している。当然、イベントごとにグルーヴも違えば、登場するDJ陣の顔ぶれもバラエティに富んでいる。イベントごとに主なDJを紹介していこう。

【水曜】若手DJたちが躍動:「HOLIC」

2024年11月のHOLICSのフライヤー

若手DJをメインにフックアップしたイベントが「HOLIC」。レジデントDJ IVERが渋谷、新宿、六本木で活躍している若手DJのなかからインバウンド客にも通用するDJをフックアップしている。

「IBEX TOKYO」にはない外部からの刺激を促すという意味でも、若手の活躍の場を設けるという意味でもチャンレンジングなイベントとなっている。ふだんは20代後半から上は40、50代まで幅広い年齢層が集まる「IBEX TOKYO」に、若手DJを目当ての20代のヘッズたちが集う。

ここでは、DJ K9・DJ NALU・DJ ANSWERの3名を紹介する。

DJ K9/every 2nd Wednesday

DJ K9(本人提供)

1993年生まれ、静岡県出身。DJ/プロデューサー。2014年から地元静岡でDJとしての活動を開始し、2020年には同じ静岡の仲間と自身主宰レーベル「TOP OFF ENTERTAINMENT」を立ち上げる。ビートメイク、プロデュース業もこなし、アーティストへの楽曲提供や自身名義の作品をリリースしている。

DV IVER

US HIPHOP軸にフロアの雰囲気を読む安定したプレイをしてくれます。金曜のコアタイムをプレイできる実力がありながら、若手DJの兄貴的存在です。

▼▼DJ K9のプレイリスト▼▼

DJ NALU/every 3rd Wednesday

NALU(画像:Instagramより)

1997年生まれ。DJ/セレクター。「BAY KLANG SQUAD」所属。本場ジャマイカ修行で培ったダンスホール、レゲエのプレイに定評があり、HIPHOPやR&Bも取り入れながら、若手ながら80s、90sのクラシックもプレイ。

DV IVER

ピークタイム前の一番難しい時間の雰囲気をつくるのが得意なDJです。

DJ ANSWER/every 4th Wednesday

DJ ANSWER(画像:Instagramより)

1986年生まれ、埼玉県出身。2002年、15歳でDJのキャリアをスタート。「IBEX TOKYO」で行われていたR&Bナイト「Wednesday HOLIC」でレギュラーDJを務める。

DV IVER

R&Bを中心にHIPHOPやレゲエ、ハウス、ディスコなど幅広いジャンルをプレイしてくれています。

    【水曜/ある日のタイムテーブル】NALUのプレイ

    23:00−23:45 Joii Hill
    23:45−00:30 NASA
    00:30−01:15 BuckRoll
    01:15−02:00 SUZZY
    02:00−02:45 NALU
    02:45−03:30 IVER
    03:30−04:15 Joii Hill
    04:15−05:00 NALU

    DJ IVER提供

    【木曜】ダンサーたちが集うレギュラーパーティ:「FRESH」

    2024年11月のFRESHのフライヤー

    「IBEX TOKYO」がレギュラーイベントとして行っている唯一のダンサーが集うパーティ。都内各地のクラブを賑わせているゴーゴーダンサーたちが「IBEX TOKYO」に集いフロアを熱くする。DJ陣は若手を中心にタイムテーブルが組まれ、トラックチューンやガールズソングをメインにプレイする一夜。

    ここでは、DJ TSUHAKO・DJ NOGU・DJ NAOYA・DJ TAIGAの4名を紹介する。

    DJ TSUHAKO/1st&3rd Thursday

    DJ TSUHAKO(本人提供)

    沖縄県出身。2019年に渋谷「GASPANIC」でDJデビュー。新宿「CASABLANCA」のレジデントDJを務める。DJネームは本名の「津波古」から。

    DV IVER

    2000年代のHIOHOPを中心に、スクラッチやロングDJもこなします!

    ▼▼DJ TSUHAKOのプレイリスト▼▼

      DJ NOGU/1st&3rd Thursday

      DJ NOGU(画像:Instagramより)

      1998年生まれ、香川県出身。2023年の上京前からシーンで噂となっていた若手の注目株。自ら「IBEX TOKYO」の門を叩いたことで、DJ IVERの目に止まり、土曜のオープンアップから木曜のメインDJを務めるまでに。

      DV IVER

      荒削りだけど今後もっとも注目している若手DJのひとりです。

      DJ NAOYA/2nd&4th Thursday

      DJ NAOYA(画像:Instagramより)

      1998年生まれ、千葉県出身。『ラップスタア誕生』を制したeyden率いる「98jams」のDJ。10代、20代からの支持が厚く、「IBEX TOKYO」でレギュラーDJとしてキャリアを重ねている。

      DV IVER

      プライベートでも仲良くさせてもらっていて、今後期待の若手DJです。

        DJ TAIGA/2nd&4th Thursday

        DJ TAIGA(画像:Instagramより)

        1998年生まれ、千葉県出身。DJ NAOYA同様「98jams」のクルーの一員。DV IVER曰く「クルーのムードーメーカー的な存在」。

        DV IVER

        「IBEX TOKYO」ではHIPHOPだけでなく幅広いジャンルのプレイを得意としています。

          【木曜/ある日のタイムテーブル】DJ NAOYA&DJ TAIGAのプレイ

          23:00−23:45 RIKUTO
          23:45−00:30 SPIA
          00:30−01:15 Joii Hill
          01:15−02:00 IVER
          02:00−02:45 NAOYA
          02:45−03:30 TAIGA
          03:30−04:15 IVER
          04:15−05:00 SPIA
          05:00−05:45 NAOYA
          05:45−06:30 TAIGA

          DJ IVER提供

          週末IBEXは海外のクラブさながらのグルーヴが

          前編では水曜と木曜のレギュラーイベント「HOLICS」「FRESH」を紹介したが、海外のクラブさながらの、”THE IBEX”なグルーヴを楽しめるのは、金・土曜のレギュラーイベントだ。後編では、東京を代表するトップDJが顔をそろえるパーティ「FRIDAY’」「IBEX SATURDAY」と、各DJについて紹介しよう。

          データ:ROPPONGI IBEX TOKYO

          • address:東京都港区六本木3-11-6 泰明ビル5F
          • tel:03-3746-1075
          • open:23:00
          • charge:水曜、木曜/フリー 金曜、土曜/1drink 1,000円
          • WEB:ROPPONGI IBEX TOKYO
          • Instagram:@ibextokyo_official
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          この記事を書いた人

          「PLAYS」はDJがクラブでかけたプレイリストを発信するウェブサイトです。 PLAYSマガジン編集部では、プレイリストに含まれる曲やアーティストを現役DJならではの視点で解説したり、日本各地のDJインタビュー記事を発信しています。

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