【ケンドリックラマー/Kendrick Lamar】「Alright」を解説!リリックの意味やメッセージは?

現代ヒップホップシーンを代表するアーティストの一人、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)。彼の音楽は、複雑な比喩や隠喩(たとえ)を用いて人生の経験や社会問題を表現するスタイルが特徴で、多くのファンを魅了しています。

グラミー賞を複数回受賞するなど、アメリカのヒップホップ界だけでなく、音楽界全体でその地位を不動のものにしていますが、本記事では、グラミー賞で最優秀ラップソングと最優秀ラップパフォーマンスを受賞した「Alright」のリリックの意味やメッセージについて、歌詞の紹介を交えて解説します。

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Kenrick Lamarの曲が含まれる、現役DJが実際にクラブでかけているプレイリストはこちら
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目次

ケンドリックラマー/Kendrick Lamarのディスコグラフィーについて

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「DNA.」以外にも、ケンドリック・ラマーは数多くの曲をリリースしています。ここでは、代表的なシングルを年代順に紹介します。

  • 2011年: – HiiiPoWeR
  • 2012年: – The Recipe
  • 2012年: – Swimming Pools (Drank)
  • 2013年: – Bitch, Don’t Kill My Vibe
  • 2013年: – Poetic Justice (feat. Drake)
  • 2013年: – Backseat Freestyle
  • 2015年: – i
  • 2015年: -The Blacker the Berry
  • 2015年: -King Kunta ←「King Kunta」の解説記事はコチラ
  • 2015年: -Alright ←今回の記事
  • 2016年: – untitled 02 | 06.23.2014.
  • 2017年: – HUMBLE ←「HUMBLE」の解説記事はコチラ
  • 2017年: – DNA 「DNA.」の解説記事はコチラ
  • 2017年: – LOYALTY (feat. Rihanna)
  • 2017年: – LOVE (feat. Zacari)
  • 2018年: – All the Stars
  • 2018年: – King’s Dead (with Jay Rock, Future & James Blake)
  • 2020年: – The Bigger Picture
  • 2021年: – Family Ties
  • 2021年: – Range Brothers
  • 2022年: – The Heart Part 5
  • 2022年: – N95

「Alright」のリリース日、チャートランキング、受賞歴について

ケンドリック・ラマーの「Alright」は、2015年3月15日にリリースしたアルバム「To Pimp a Butterfly」に収録された楽曲で、同年6月30日にシングルとしてリリースされました。

「The Neptunes」や「N.E.R.D」のメンバー、ファレル・ウィリアムズ(Pharrell Williams)がプロデューサーを務めた作品で、グラミー賞で最優秀ラップソングと最優秀ラップパフォーマンスを受賞し、ラマーの社会に対する独特な洞察力と音楽的才能を証明するものとなりました。また、アメリカのBillboard Hot 100だけでなく、アメリカ以外の多くの国のチャートにもランクインするなど、世界的な楽曲となりました。

<To Pimp a Butterflyに収録されている曲>

  • Wesley’s Theory
  • For Free? (Interlude)
  • King Kunta
  • Institutionalized
  • These Walls
  • u
  • Alright
  • For Sale? (Interlude)
  • Momma
  • Hood Politics
  • How Much a Dollar Cost
  • Complexion (A Zulu Love)
  • The Blacker the Berry
  • You Ain’t Gotta Lie (Momma Said)
  •  i
  • Mortal Man

「Alright」の歌詞の意味やメッセージとは?

そんな大ヒット曲である「Alright」を通じて、ラマーは社会的不平等と個人の苦悩に対する希望のメッセージを伝えています。この曲のメインテーマは、アメリカに存在する人種差別と警察による暴力にも屈せず、結束して前進し続けることができるんだ、という「信念」です。ラマーは、「We gon’ be alright(俺たちは大丈夫)」というフレーズを繰り返し、困難に立ち向かう強さと楽観的であろうとする姿勢を表現しています。


ここでは、歌詞の中で使われている俗語を可能な限りピックアップして、解説します。
(人により解釈に幅がありますので、あくまで参考程度としてお読みください)

Alls my life I has to fight, nigga
Alls my life I…
Hard times like, “God!”
Bad trips like, “Yea!”
Nazareth, I’m fucked up
Homie you fucked up
But if God got us
Then we gon’ be alright

Genius

このパートでは、人種差別を描いた小説の一節を引用したり、聖書に登場する単語や神(God)を登場させ、この後に続くバースの序章になっていると考えられます。

スラングについて①

  • Alls my life I has to fight, nigga. – 20世紀初頭のジョージア州の人種差別と女性の抑圧を描いたアリス・ウォーカーの『カラー・パープル』を思わせる一節
  • Nazaret – 聖書でイエスの故郷を指す “ナザレ “。苦難を象徴的に表している。イエス自身は故郷では受け入れられず、ケンドリックがその生い立ちゆえに直面する日々の逆境を反映している。

Uh, and when I wake up
I recognize you’re lookin’ at me for the pay cut
But homicide be lookin’ at you from the face down
What Mac-11 even boom with the bass down
Schemin’! And let me tell you ‘bout my life
Painkillers only put me in the twilight
Where pretty pussy and Benjamin is the highlight
Now tell my momma I love her
but this what I like, Lord knows 20 of ‘em in my Chevy,
tell ‘em all to come and get me
Reapin’ everything I sow, so my karma come
And heaven no preliminary hearing, so my record
And my motherfuckin’ gang stand in silence for the record Tell the world I know it’s too late
Boys and girls, I think I gone crazy Drown inside my vices all day
Won’t you please believe when I say

Genius

このパートでは、名声・経済格差・ストリートライフの魅力に対するケンドリック自身の葛藤を掘り下げています。「Homicide be looking at you from the face down」では、社会から疎外されたコミュニティーに常に存在する暴力の恐ろしさを伝え、ギャングという魅力的な一方で、危険な生き方について語り、それは苦境に立たされている人々にとって富と権力への近道となりうることを伝えようとしていると考えられます。

スラングについて②

  • Pay cut – 給料カット、減給
  • Homicide – 殺人(ここでは「死」や「危険」を暗示しているとも受け取れる)
  • Mac-11 – 自動拳銃の名称
  • Twilight – ここでは「意識が朦朧としている状態」を指している
  • Pretty pussy – ここでは魅力的な女性を指す俗語
  • Benjamin – 100ドル札(ベンジャミン・フランクリンが描かれているため)
  • Chevy – 自動車のブランド・シボレー
  • Karma – 行いに対する宇宙的な報いや結果
  • Vices – 悪い癖や中毒

Wouldn’t you know
We been hurt, been down before
Nigga, when our pride was low
Lookin’ at the world like, “Where do we go?”
Nigga, and we hate po-po
Wanna kill us dead in the street fo sho’
Nigga, I’m at the preacher’s door
My knees gettin’ weak, and my gun might blow
But we gon’ be alright

Genius

このパートでは、構造的に引き起こされる不正について語っています。

スラングについて③

  • po-po – 警察のこと。ブラックコミュニティにおける暴力と人種差別の象徴として登場

What you want you, a house⁠? You, a car?
Forty acres and a mule? A piano, a guitar?
Anything, see my name is Lucy, I’m your dog
Motherfucker, you can live at the mall
I can see the evil, I can tell it, I know it’s illegal
I don’t think about it, I deposit every other zero
Thinking of my partner, put the candy, paint it on the Regal
Digging in my pocket, ain’t a profit big enough to feed you
Every day my logic get another dollar just to keep you
In the presence of your chico, ah!
I don’t talk about it, be about it, every day I sequel
If I got it then you know you got it, Heaven, I can reach you
Pat Dawg, Pat Dawg, Pat Dawg, my dog, that’s all
Bick back and Chad, I trap the bag for y’all
I rap, I black on track so rest assured
My rights, my wrongs; I write ‘til I’m right with God

Genius

ルシファーを略して “ルーシー “というキャラクターが登場しますが、これは、ケンドリックが悪魔や悪に喩えたものであり、名声と富に伴う誘惑を指していると考えられます。

スラングについて④

  • Forty acres and a mule – アメリカの歴史において、解放された奴隷に約束された土地と家畜のこと。ここでは、大きな報酬や補償を指す比喩(たとえ)として使われている
  • Lucy – ルシファー(Lucifer)の略語。ここでは、悪魔や誘惑を象徴するキャラクターとして登場
  • Candy paint – 自動車の光沢のある、鮮やかな塗装を指すスラング。
  • Regal – ビュイック・リーガルのこと。アメリカの自動車ブランド、ビュイックが製造するモデル名。
  • Pat Dawg – 「友達」や「仲間」を指す俗語
  • Bick back – リラックスすることを意味するスラング「kick back」の変
  • Trap the bag – お金を稼ぐこと、特に違法な手段で。
  • Black on track – 曲で素晴らしいパフォーマンスをすること。

「Alright」に対するファンやSNSの反応は?

「Alright」は、リリースされて以来、ファンやSNSユーザーから大きな支持を得ていますが、特にBlack Lives Matter運動の中で力強いアンセムとして受け入れられ、多くの人々に希望と結束のメッセージとして受け取められました。ファンは、「We gon’ be alright」というフレーズを、困難な時でも楽観主義と復活(レジリエンス)の象徴として使っていて、楽曲の域を超えた存在になっています。


以上、ケンドリック・ラマーの代表曲の一つ「Alright」を、歌詞に込められたメッセージや音楽的な側面から解説しました。

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この記事を書いた人

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